ソフトウェア無線
ソフトウェア無線とは?
ソフトウェアの無線という事ですから、無線機を全てソフトウェアで処理するのか?
と思われる方も少なくないかと思います。
間違いではないのですが、ソフトウェアで処理する事が重要なのではなく、無線機や無線通信システムといった通信環境に対するソフトな対応ができる無線機と捉えるのがいいかと思います。
これを実現するのにはソフトウェアならやりやすいですし、ソフトウェアでなくてもデジタル処理であればフレキシブルな対応が可能だと言うことです。
そこでより柔軟な言葉が、SDR (Software Defined Radio)です。
そして、通信環境により柔軟性を持つ技術として、無線通信状況をモニターし、その状況を判断することで、より最適な通信を行っていこうという技術としてコグニティブ無線(Cognitive Radio)の研究が盛んに行われています。
ソフトウェア無線機のためのフロントエンド
理想的なソフトウェア無線ではディジタル信号処理のみで実現することでマルチバンドとマルチモードへの対応が自在なフロントエンドは、SDRにおいてもマルチバンドやマルチモードを実現するための技術として重要な技術とされています。
しかし、マルチバンドやマルチモードを実現した無線機がSDRかというと、そんなことはないので、マルチバンドやマルチモードを実現するための技術としてしかSDRを捕らえてもらえないのであれば、SDRなどいらないということになります。
実際、携帯電話をマルチバンドに対応させるとかマルチモードに対応させるかということであれば、SDRはいらないと思います。
でも、SDRの実力はそんなものではないのです。
無線信号を自在に処理するということは、単にマルチバンドであるとかマルチモードであるとか以上のことを意味するのです。
いわゆるマルチモードやマルチバンドの無線機というのは、通常は同時に通信可能なモードやバンドはひとつだけです。ひとつのハードウェアで、複数のモードやバンドを同時に処理できると同時に処理できるモードやバンドに比例して通信速度が向上します。マルチバンドでなくても、ひとつのバンドで、複数のチャンネルを同時に処理できればチャンネル数に比例して通信速度が向上します。複数のチャンネルを同時に処理するというのはSDRだけの専売特許ではありませんが、従来のフロントエンドではこのような処理が実現しにくいという問題があり、SDRの実現が期待されることになります。
でも、このように自在に無線信号を処理するフロントエンドには問題があります。このように自在に処理するためには複数の信号を同時に処理しなければいけないのですが、そのためには非常に高い性能が要求され、高い性能が意味するところは高価で消費電力も大きいということです。
複数の通信を行っているときに消費電力が大きくなるのは、複数の無線機を並べれば無線機の台数分だけ消費電力が大きくなるので当たり前のこととして、電力の無駄を避けるために、扱う信号数が少ないときには消費電力を下げるような制御を行います。これも受信ではSDRに限定しない技術ではあります。
送信に関しては、送信電力を制御するのが一般的な電力制御です。出来るだけ電力を抑えることは、他の通信への干渉もおさえるので、周波数利用効率の観点からも重要です。
ところで、アダプティブ変調では、同じ送信電力でも高速な通信を行っているときと通信速度が低速なときとでは送信部に要求される性能に差があり、高速な通信を行っているときには電力効率を犠牲にして性能を向上させる必要があり、従来技術の設計では高速通信時の性能に合わせて送信部を設計するために、低速通信時の消費電力には無駄が生じます。SDRの研究では、送信の電力効率も自在に変更できるようにしようという研究があり、LINCとEERのハイブリッド構成では性能（歪特性）よりも電力効率が重視されるときにはEERとして送信機を動作させ、性能が重視されるときにはLINCとして動作させ、この中間状態にも制御可能とすることで、性能と電力効率のバランスの最適化を図っています。
ソフトウェア無線時代のビジネス
ソフトウェア無線の時代になると、柔軟性の高いハードウェアさえあればFPGAやソフトウェアでどのような通信･放送システムに対応できるようになります。という事は、高額投資が必要なハードウェア開発設備無しに高性能高機能通信ソフトウェアの開発が可能になります。
今の所、携帯のベースバンド処理やDSPソフトウェアの製品開発となると大きな会社の独壇場という事になっていますが、ベンチャーにもチャンスが巡ってきそうです。
